受験クラブ〜知りたい情報アレコレ解説〜

受験生に限らず、高みを目指す上で「勉強」の次に重要なのは「情報」。自らの未来を切り拓くために、「何者か」になるために、国内外の様々な研究・データを参考に考えていきます。

「成績が良い子」と「成績が悪い子」の習慣の違いは何?

目次

概要

この記事では、「成績が良い子」と「成績が悪い子」の習慣の違いに焦点を当て、外国や日本の研究論文を参考にしながら、具体的なデータや数値を交えて解説します。学力には多くの要因が影響しますが、日頃の生活習慣や学習習慣が大きく関与していることが多くの研究から示されています。特に、自ら学ぶ姿勢生活リズムが学業成績に深く関わっていることが最新の調査からも分かっています。この記事が、お子さんの学習環境を見直すきっかけとなれば幸いです。


 

1. はじめに

子どもの学力向上を目指すうえで、何に注目すれば良いのでしょうか。一般的には、塾に通う・家庭教師をつける・宿題をきちんとやるといった直接的な学習活動が思い浮かぶかもしれません。しかし、日常の生活習慣や学習以外の活動が、想像以上に学業成績に影響を与えることが分かっています。

例えば、文部科学省が毎年実施している全国学力・学習状況調査(いわゆる「全国学力テスト」)では、家庭での読書習慣や朝食の有無、睡眠時間などが学力にどう関わるかを調べています。その分析結果を見ると、勉強時間だけでなく、生活全体のリズム学習へのモチベーションが成績に大きく影響することが指摘されています(文部科学省「全国学力・学習状況調査」)。

本記事では、こうした国内外の研究データを踏まえ、成績が良い子成績が悪い子が普段どのような習慣をもっているのか、具体的な数値やエピソードを交えながら紹介していきます。


 

2. 研究データの概要

2-1. OECDPISA」による国際比較

最もよく知られている国際学力調査の一つに、経済協力開発機構OECD)のPISA(Programme for International Student Assessment)があります。これは15歳前後の生徒を対象に、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの3分野を評価する大規模調査です。
2018年実施のPISA調査(PISA 2018)では、「毎日あるいはほとんど毎日、楽しみとして読書をする」と回答した生徒
は、「ほとんど読書をしない」と回答した生徒よりも、読解力で平均して約52ポイント高いスコアを取る傾向があることが報告されています。

出典: OECD (2019), PISA 2018 Results (Volume III)

2-2. 日本国内の調査

一方、日本国内の調査では、文部科学省が行う全国学力・学習状況調査の結果や、ベネッセ教育総合研究所による「学習基本調査」などがあります。

  • 朝食の有無平均正答率の関係
    例として、文部科学省の令和3年度調査(2021年)からは、毎日朝食をとる児童生徒は、朝食をほとんどとらない児童生徒よりも国語・算数(数学)両方で5ポイント以上高い平均正答率がみられたという結果が公開されています(文部科学省「全国学力・学習状況調査」)。
  • テレビやスマホの視聴時間
    ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」(2015年)では、1日あたりのテレビ・スマホ・ゲームなどの視聴・利用時間が3時間を超える生徒は、1時間未満の生徒に比べて学習意欲が低下する傾向が確認されています。

出典: ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」(2015年)


 

3. 成績が良い子の習慣

3-1. 規則正しい生活リズム

成績が良い子に共通する代表的な特徴として挙げられるのが、規則正しい生活リズムです。朝は決まった時間に起き、朝食をきちんととり、夜は決めた時間に就寝するというサイクルが整っている子ほど、学校での集中力が高まり、学習効果も向上します。
先述の通り、文部科学省の調査では朝食の有無と学力に明確な関連が見られています。「朝ごはんを毎日きちんと食べている子は、食べていない子よりも5ポイント以上高いスコアを出している」という結果は、その象徴的な例です。

3-2. 日常的な読書習慣

PISAの調査でも示された通り、読書習慣は読解力だけでなく、他の教科の理解力を高めるうえでも重要な役割を果たします。成績が良い子は、本や新聞、オンライン記事などを活字として読む時間を意識的に確保しているケースが多くみられます。
特に、趣味としての読書は、興味・関心を広げる効果があり、学校の勉強においても未知の概念や知識に対して抵抗感が生まれにくくなると言われています。実際、PISAのデータでは、楽しみとして読書をする頻度が高い生徒ほど学力が高いという傾向が国際的に確認されています(OECD (2019))。

3-3. 自発的な学習計画と振り返り

成績が良い子は、教師や保護者から与えられた課題だけでなく、自分自身で学習計画を立てる習慣をもち、計画の実行後には必ず振り返りを行うことが多いと報告されています。
たとえば、「今日の勉強は何をどのくらいやるのか」を朝や前夜に具体的に決め、勉強が終わったら「どこが理解できて、どこが理解不足だったか」をメモするなど、学習習慣がしっかり確立している傾向が見られます。

3-4. 睡眠時間の確保

睡眠不足は集中力や記憶力を低下させるため、学業成績にも悪影響を与えます。ベネッセ教育総合研究所の調査でも、睡眠時間が7〜8時間以上確保できている子の方が、平均正答率・学習意欲ともに高い傾向が確認されています(ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」)。
成績が良い子は、夜更かしを避けて十分な休息をとり、朝起きてからのパフォーマンスを最大化することを日頃から心掛けていると言えます。


 

4. 成績が悪い子の習慣

4-1. 不規則な生活サイクル

逆に、成績が伸び悩んでいる子には、夜型の生活リズムで、朝食を抜く睡眠不足などの要因が重なっていることが多く見られます。
文部科学省の全国学力テストの分析データでも、朝食を食べない子は食べる子と比べて平均正答率が5ポイント以上低い結果が報告されており、この差は小さくありません(文部科学省「全国学力・学習状況調査」)。

4-2. 受け身の学習姿勢

与えられた課題をただこなすだけ、もしくは家庭学習の時間が確保できていない子は、なかなか学力が向上しません。与えられた宿題や塾の課題をギリギリで済ませてしまい、学習内容の理解が浅いままになっているケースがあります。
また、自ら学習計画を立てることが苦手な場合、学校や塾で学ぶ内容が点在したまま整理されないため、知識の定着が不十分になる傾向があります。

4-3. 過度なスマホ・ゲーム利用

ベネッセ教育総合研究所「第5回学習基本調査」(2015年)によると、1日3時間以上スマホやゲームを利用している子は、1時間未満の子と比較して学習意欲が低下するだけでなく、学校の授業に集中しづらいという報告があります。
もちろん、スマートフォンやゲーム自体は適切に使えば情報収集リフレッシュに役立つツールですが、過度な使用は生活習慣を乱し、学習時間を圧迫する大きな原因となりがちです。

4-4. 振り返りの欠如

成績が悪い子は、テストや宿題が終わっても振り返りをしないままにする傾向があります。どこができてどこができなかったのかを分析しないため、次回の勉強に活かせる改善点を見出せず、同じミスを繰り返す結果になりやすいと指摘されています。


 

5. 習慣改善のポイント

5-1. 朝型にシフトする

成績向上を目指すうえでまず重要なのは、生活リズムの改善です。夜型生活を朝型に切り替えるだけで、勉強時間がしっかり確保できるようになり、学校での集中力も高まります。

  • 就寝時間を少しずつ早める
  • 目覚まし時計だけでなく、日光を活用して自然に起きられるように工夫する
  • 朝ごはんをしっかり食べる

これらを徹底するだけでも、学習効率は大きく変わります。

5-2. 読書タイムを設ける

PISAの結果からも分かる通り、読書習慣が学力に及ぼす影響は非常に大きいです。1日15分でも良いので、読書に充てる時間を毎日確保することをおすすめします。

  • 興味のあるジャンル(小説・漫画・雑誌・オンライン記事)から始める
  • 親子で一緒に読み、感想をシェアする

こうしたアプローチで、活字に親しむ習慣を徐々に身につけるのが効果的です。

5-3. 学習計画と振り返りを習慣化

自発的に勉強する力を育てるには、学習計画を立てて定期的に振り返るサイクルが欠かせません。

  • 「何を、いつ、どれだけやるか」を紙やアプリに書き出す
  • 学習後には、「理解度」「疑問点」「改善点」を簡単にメモする

この作業を毎日繰り返すことで、勉強時間の確保やモチベーションの維持に繋げられます。

5-4. 適度なデジタル・デトックス

スマホやゲームを一切禁止するのは難しいですが、使用時間を制限する寝る前や勉強時間中は電源を切っておくなど、ルールを設けることは大切です。

  • スマホ依存を防ぐために「スクリーンタイム」機能を活用
  • 勉強時間はスマホを別室に置く

こうした対策を講じると、集中できる学習時間が格段に増えます。


 

6. まとめ

「成績が良い子」と「成績が悪い子」の習慣の違いには、次のようなポイントが挙げられます。

  1. 規則正しい生活リズムが成績を左右する
  2. 毎日の読書習慣は学力を大きく伸ばす
  3. 自発的な学習計画と振り返りが重要
  4. 過度なスマホ・ゲーム利用は学力を下げる要因になる
  5. 朝型生活や朝食の習慣化は学力向上に効果的

これらを踏まえて生活や学習の習慣を見直すと、成績アップに繋がるだけでなく、学ぶ意欲自己管理能力を育むことにも役立ちます。学力は一朝一夕で大きく変化するものではありませんが、日々の積み重ねこそが最も大きな成果を生むということを、さまざまな研究結果が示しています。

ぜひ、この記事で紹介した研究データや具体的な改善策を参考に、お子さんの習慣を振り返ってみてください。小さな変化の積み重ねが、やがては大きな学力向上につながるはずです。「何をするか」よりも「どう続けるか」が鍵となります。日々の実践と振り返りを大切に、充実した学習環境を整えてみましょう。


この記事で引用した主な参考文献・出典

ぜひ、習慣づくりのヒントとして活用していただき、より良い学習環境を築いていただければと思います。