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「文系」卒業者は生涯年収が低いって本当?

目次


概要

本記事では、卒業大学における「文系」と「生涯年収」の関係について、国内外の研究論文と具体的な数値データをもとに解説します。よく耳にする 「文系は理系より稼げないのでは?」 といった声や、学部選択がその後のキャリアにどの程度影響を及ぼすのかといった疑問を、データを踏まえながら考察していきます。実際のところ、文系であっても高い生涯年収を得られる人は多く存在し、一方で学部だけが原因で生涯年収を決定づけるわけではないという見方もあります。さまざまな視点から、文系卒の生涯年収の実態を見ていきましょう。


はじめに

文系か理系かという選択は、日本の教育システムでは高校時代、大学受験の段階で多くの人が意識するテーマです。とくに文系学部を選ぶと、将来的に就職や収入面で不利になりやすいのではないか、という不安を抱える人も少なくありません。では、実際に 文系と生涯年収 にはどのような関連があり、どんな要因が働いているのでしょうか。

本記事では、文系卒業者を対象にした統計データや学術研究を参照しながら、文系卒が社会でどのような生涯収入を得ているかを探ります。さらに、文系で高収入を得ているケースや、逆に低収入にとどまるケースの違いは何に起因するのか、具体的な要因を紐解いていきます。


文系大学卒業者の生涯年収とは

文系・理系による生涯年収の差

一般的に、日本では「理系のほうが就職に有利」「理系のほうが初任給が高い」などといわれることがあります。実際、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)のデータ(2020年時点)によると、大卒1年目の初任給は理系が平均22.0万円、文系が平均21.3万円と、理系のほうがやや高い傾向にありました。

しかし、生涯年収の観点で見ると、単純に理系が上、文系が下と割り切れるわけでもありません。たとえば、文系でも企業管理職やコンサル、金融系で成功すれば高収入につながるケースが多々あります。逆に、理系でも研究職や専門職で思うようなキャリアアップを得られない場合、平均的な収入にとどまることもあります。

生涯年収の目安

一般的に、大卒の生涯年収は約2.5億円~3億円程度とされることが多いですが(男女差や企業規模によるバラつきあり)、文系の場合、約2.4億円~2.8億円が目安とされる調査結果も存在します。

ただし、この数値はあくまで平均的なものであり、学部や専攻、就職先、キャリア形成の仕方によって大きく変動します。


海外の研究やデータ

アメリカでの文系VS.理系の年収差

アメリカでは、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)分野が高収入につながりやすいと考えられています。実際に、米国国勢調査局(Census Bureau)のデータ(2019年)によると、STEM専攻の学士号取得者の年収中央値は約6万ドル~7万ドルほどで、社会科学や人文系の学士号取得者は約5万ドル前後という報告がありました。

生涯年収への影響は大学レベルや専攻による差が大きい

同じ文系でも、経済学やビジネス専攻などの学生はMBAを取得して高収入の企業に就職するケースが多いため、学士号だけの他文系専攻と比較すると生涯年収で大きな差が出るとの報告もあります。
PayScale(米国の給与調査機関)の2018年データでは、文系学部卒の中でビジネス・経済系専攻は生涯賃金が他の人文系専攻より約15~20%高いとされました。


日本における調査と実態

大学の文系学部と生涯賃金

日本では、文部科学省「学校基本調査」国税庁の統計 などから、文系と理系での就職先や賃金に関するデータが得られます。しかし、文系・理系の違いよりも企業規模(大手 vs. 中小)業界(金融、商社、ITなど)、そして 役職(管理職など) による差のほうが生涯年収における影響が大きいという意見が多いです。

大学通信社の推計(N=5000, 大卒者対象アンケート)でも、文系だから生涯年収が低いとは限らず、大手メーカーや金融に就職した文系卒は、平均して約2.9億円~3.2億円 のレンジで生涯年収を得るという結果が得られました。一方、理系卒でも中小企業勤務で昇進が限定的な場合、約2.5億円程度にとどまる例も報告されています。

「文系=就職しづらい」か

一部で言われる「文系学部は就職に不利」という声は、就職先の業界選択や本人の希望職種によって大きく変わります。リクルートの就職白書(2021年)では、文系学部生と理系学部生の就職率を比べると、確かに理系は研究職やエンジニアの需要が高く、内定率が高い傾向にあるものの、文系でも営業や総合職など幅広い職種での需要が依然として大きいとされています。


文系卒と生涯年収を左右する要因

  1. 業界・企業規模
    金融や総合商社、コンサル、ITなど高収益な業界で活躍できれば、文系であっても生涯年収は3億円を超えるケースが珍しくない。

  2. 役職・管理職への昇進
    大企業での管理職やエグゼクティブ職に就くと、文系理系を問わず大幅な年収アップが期待できる。

  3. スキルセット(語学力、コミュニケーション、マネジメント)
    文系出身者でも、データ分析スキルやプログラミングを身につけていると需要が高まり、年収水準が上がることが指摘されています。

  4. 大学のブランド力・ネットワーク
    高偏差値大学の文系卒業者は、外資系企業や有名日系企業への就職率が高い傾向があるため、生涯年収が上がりやすいというデータもある。


まとめ

卒業大学における「文系」と「生涯年収」の関係は、一概に「文系だから低収入、理系だから高収入」とは断定できない複雑なものであることが、国内外の研究データから示唆されます。

  • アメリカのデータ(Census Bureau, PayScale)日本の推計(厚生労働省、大学通信社等) を見ると、確かに理系のほうが初任給や平均年収がやや高い傾向はあるものの、文系でも高収入を得ている人は多く存在する。
  • 文系か理系かよりも、業界選択・企業規模・役職・個人のスキルなどが生涯年収に大きな影響を及ぼす。
  • 高度なマネジメント能力や対人コミュニケーション能力を発揮し、管理職やエグゼクティブ職に就けば、文系でも3億円を超える生涯年収を獲得する例は珍しくない

「文系だから生涯年収が低いという先入観」は必ずしも正しくない
本質的には、個人の適性や努力、スキル習得によってキャリアパスが大きく変化し、年収も左右されるのが現実です。もし文系であっても、高度な専門知識や資格、語学力などを身につけることで、高い生涯年収を実現する可能性は十分にあります。結局は、学部や専攻だけでなく、その後のキャリア形成と学習を継続できるかどうかが、長期的な収入につながる鍵となるでしょう。