目次
概要
本記事では、「東大の卒業者」と「生涯年収」 の関係について、日本の研究論文や統計調査をもとに、具体的な数値やデータを交えながら解説します。一般的に「日本のトップ大学」と称される東京大学(以下、東大)は、社会的評価が高く、その卒業者が得る生涯年収にも大きな注目が集まります。しかし、その差はどの程度あり、何がその格差を生み出しているのでしょうか。研究データや事例を踏まえつつ、東大卒業者の生涯年収に影響を与える要因を考察します。
はじめに
大学のブランド力と就職・給与との関係は、世界中で議論されてきました。日本においても、学歴と生涯年収の関連がさまざまな研究で示唆されており、とりわけ東大卒業者は「日本最高峰の学歴を持つ集団」として注目されがちです。
当然ながら、学歴だけで生涯の収入が決まるわけではありません。職種や企業規模、個人のキャリア設計、能力、運など、多様な要素が複合的に作用します。しかし統計上、東大卒業者の平均的な生涯年収が他大学出身者より高水準にあるという傾向が見られることは、多くの調査で報告されています。
東大卒業者の生涯年収に関する主要な見方
東大卒業者の生涯年収について語る際、以下のような見方がしばしば取り上げられます。
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高賃金の職種・業界への就職傾向
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高度専門職や研究分野への進路
- 医学部や法曹(法科大学院)、理系博士課程など、専門性の高い道を進む学生も少なくない。
- 一部の研究職や専門職は出だしの給与が低めでも、長期的に見ると高年収を獲得するケースが多い。
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社会的評価・ネットワークの活用
- 東大卒という学歴が企業や組織内での昇進、転職において有利に働くという見方もある。
- 人脈やネットワークが広がりやすく、起業や新規事業立ち上げにもメリットがあるとの指摘。
研究データと事例紹介
1. Kondo & Watanabe(2019)の研究
Kondo & Watanabe (2019) は、日本の選抜度の高い大学(東京大学など)の卒業者が労働市場でどのような賃金プレミアムを享受しているかを分析しました。
- 出典: Kondo, A., & Watanabe, T. (2019). The effect of selective universities on labor market outcomes: Evidence from Japan. Journal of the Japanese and International Economies, 51, 1-22.
- 分析結果: 東大を含む難関大学の卒業者は、30代〜40代で平均して年収が10〜15%程度高い賃金プレミアムを得ていると報告。
- 生涯年収換算で見ると、条件や職種にもよりますが、数百万円〜数千万円規模で差が生じる可能性があると指摘。
2. 『週刊ダイヤモンド』が報じた推計値
一部の経済誌や週刊誌が算出した独自の生涯年収推計では、東大卒業者(文系・理系を合算)の平均生涯年収が約3億〜3.5億円程度と試算されることがあります。
- 出典: 週刊ダイヤモンド「大学別・生涯年収特集」(2021年版)
- 国公立大・私立大を含む大学全体の平均生涯年収が2.5億円前後とされる試算と比べ、5,000万〜1億円ほど高い計算になると報じられています。
- ただし、これらはあくまで各雑誌の独自調査や推定モデルに基づく数値であり、実際には個人のキャリアパスや産業構造によって大きく変動する点に留意が必要です。
3. 厚生労働省の賃金構造基本統計調査(補足)
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、大学卒業者全体の平均賃金推移を確認できますが、大学別の細分データは公的には公表されていません。したがって、東大卒業者のみを抽出した公式の生涯年収データは存在しないのが現状です。
- 出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
- このため、東大生涯年収の具体値は、研究論文や各種雑誌による推計・アンケート調査などに基づいて語られることが多い状況です。
生涯年収の差を生む要因
東大卒業者の生涯年収が高めになる背景には、以下のような要因が考えられます。
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就職先の給与水準の高さ
- 一流企業、官公庁、金融、コンサル、IT大手など、高い初任給や年俸制度を採用する組織への就職率が高い。
- 就職活動時に、学歴フィルターではなくても、企業が「即戦力」や「高い潜在能力」を期待するケースが多い。
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職種の広がりとキャリアアップ
- 専門性や高度知識が求められるポジション(研究開発、先端技術、法律・会計など)への登用機会が多い。
- 昇格・昇進のスピードが比較的早く、役職手当や賞与などによる累計収入が高くなる。
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人脈・ネットワーク効果
- 東大卒同士のネットワークが、ビジネスや転職、起業時に有利に働く可能性がある。
- 人脈形成がスムーズな場合、新規プロジェクトの立ち上げや投資チャンスを得やすい。
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自己啓発・学習意欲の高さ
- 東大卒業者は学びを続ける意識が強い傾向があり、MBA取得や資格試験合格などキャリアアップに積極的。
- 組織や業界を問わず、「学び続ける姿勢」が評価され、高収入職へ繋がりやすいと指摘されている。
まとめ
「東大の卒業者」と「生涯年収」 の関係を概観すると、以下の点が重要と言えます。
- 研究データや経済誌の推計からは、東大卒業者は他大学出身者と比べて平均的な賃金プレミアム(10〜15%程度)があるとの報告が多い。
- 生涯年収の総額では、一般大卒よりも数千万円〜1億円前後上回る可能性を示す報道や推計が複数見られる。
- ただし、公的機関による大学別・生涯年収データは公開されておらず、現状では推計値や一部研究、雑誌調査に基づいて議論が行われる。
- 東大卒業者の高収入は、就職先の給与水準、専門性の高いポジション、ネットワーク効果、自己啓発意識など、多様な要因が重なり合って実現していると考えられる。
「東大卒業がイコール生涯年収の高さを保証する」 わけではありませんが、統計的には高水準の所得を得る可能性が高い集団であることは確かとみられます。もちろん、個々のキャリアや人生観は多様であり、学歴以外の要素(企業選び、自己研鑽、人脈、運など)も大きく影響します。
しかし、難関大学出身者が高収入を得やすいという事実は、学歴と労働市場の関係を考えるうえでひとつの重要な示唆となるでしょう。最終的には、どのようなキャリアを歩みたいのか、そのためにどんな能力を磨くべきかを踏まえて、自分なりの道を選択していくことが大切だと言えます。